昨夜降った雪が着々と融けて行く昼さがりに
先日録画したマキノを見る。
2本とも1955年に日活でマキノ雅弘が監督したモノクロ映画。
マキノ監督の次郎長ものは沢山ありすぎて
どれがどれと繋がってるんだかよくわからないんだけど、
前に見たことがある「次郎長三国志シリーズ」は
どうやら今日の映画とは直接は関係ないみたい。
なにしろ生涯に260本あまりもの映画を撮ったこの監督。
ピークのときは年に40本撮っていたそうだ。
自作を何度もリメイク(本人いわくリピート)してたりもするし
次郎長ものだけでも戦前と戦後で一体何本撮ってるんだろう。
それらを並べて見比べて分析して、なんてことはやりたくもないし
素直に目の前のものを味わうことにした。
いやーひさしぶりに古い映画見るなー、なんて思いながら見始めたら
まだ百姓の頃の森の石松がいきなり唄い始めて野中のミュージカル♪
この石松(森繁)唄ってるときだけはひどいドモりが治るんだよねw
と、すぽんと映画の中に入りこんでくこの気持ちよさ。
石松含む百姓集団、がさつで陽気な山伏軍団、まだ一匹狼の次郎長、
その他もろもろの人々が、秋葉権現の火祭り目指してわらわらと
やかましゅう言うてやって参ります。 その道中の陽気なこと~w
あー、、なんて至福の時空間!!
あんまり幸せすぎておもろすぎて序盤から早くも泣けてきたー。
そして浜松秋葉に待ち構えるは悪の手先黒駒一家。チョンチョン~!
何本かの魅力的な支流が渦巻いて合わさって、
怒濤となってクライマックスへと流れ込む。
いやーーーおもろいっ!!!
次郎長カッコイイー!
ヒロインのおみよにも惚れたー!
石松も法印坊もみんなサイコー!
と、勢いに乗って続編の「次郎長遊侠伝 天城鴉」も続けて見る。
秋葉の火祭りほどのテンションはないにしろ、
こっちはこっちでしっとりといい感じ。
どっちの映画もきっと、とりたてて大傑作!ってわけじゃないのだ。
ただ「普通におもろい」のレベルがめっちゃ高いってかんじ。
マキノ映画の魅力って、なんだろうな。
絶対に破綻しない盤石の映画手腕で、常に型から逃げ続け
ひらりひらりと舞って唄って遊ぶイキ、とでも言うか。
ヒロインは両作ともに北原三枝。いい眼してるんだよねー、これが。
石原裕次郎はこの映画を見て、彼女に惚れて結婚したというマキノ談。
なにしろマキノ映画。女優の立ち居振る舞いが色っぽいのなんの。
大好きな京マチ子も藤純子も、マキノ雅弘なくしてはあり得ないのだ。
わーん、やっぱりフィルムセンターの生誕百年祭にも行かなくっちゃ。。。
と喜び覚めやらぬまま、うちのあるマキノに関する本ひっぱりだして眺めだす。 中でも一番好きな本は「マキノ雅裕女優志・情」という本。

自身が育てた、または関わった女優たちの中から45人をピックアップして、女優別にそれぞれのエピソードを語るというもの。 評論家による小難しい理屈なんかはひとつもないし、写真(というかスチールのよう)もいっぱいで嬉しいんだよね。
フィルムセンターの上映スケジュール眺めてどれを見に行くか考えたりする。 でもせっかくのマキノなのに映画オタクとかで混雑してたらいやだなあ。
とネットで混雑状況を調べてみたら、そんなには混んでないみたいだけど、往年のスターのファンのおばちゃんたちが上映中もべちゃくちゃうるさいらしい。庶民がごったがえす祝祭的なマキノ雅広の映画にふさわしい客層、というべきなのかもしれないが隣になるのはゴメンコウムルw
したり顔の映画オタクも相変わらずご健在のようで
「しまった、今日は蓮實御大と、黒沢清と、セルジュ・トゥビアナによる、ジャン・ルノワールのシンポじゃないか!今日はやけに人が少ないなと思っていたが、まさか客層の多くはそっちに流れたか?(さすがに『浪人街』はほぼ満員だったが) あまりのショックで立ち直れなくなる 」
なんていうブログを読んでしまったら、かなーり行く気が萎えてしまう。
しゃべくりおばちゃん軍団のが100倍マシだ。
そのまま夕日に融けてなくなってしまえばいいのに・・・
ハスミの弊害、いまだとどまることをしらず。
しかし!それでもやっぱり藤純子はスクリーンで見たいっ!
関連text:
「丹下左膳 乾雲の巻・坤竜の巻・昇竜の巻」 マキノ雅広生誕百年目 「藤純子引退記念映画 関東緋桜一家」 春雨春分「花と龍」