
この展覧会を見るために京都まで行ってきましたー。(→
公式サイト)
平成11年から16年までずっと修復が行われていた国宝の
伊藤若冲筆「
動植綵絵」30幅が、昨年の春から秋にかけて、皇居にある三の丸尚蔵館で6幅ずつ全5期にわけて無料公開されていた(→
公式サイト)。移り行く季節とともに皇居に通うたび、毎回異なる若冲の濃厚でシュールな世界にひたれるのがすごく楽しかった。

「
動植綵絵」より「向日葵雄鶏図」
夏には東京国立博物館でも、若冲の蒐集家として名高いジョー・プライスのコレクションを集めた「若冲と江戸絵画展」(→
公式サイト)が開催されてたし、昨年はほんと若冲一色の年だったなあ。そういえば静岡美術館にまで足を伸ばしたりもしたんだったっけ。(過去の日記参照)
今は皇居にある「
動植綵絵」だけど、もともとは「釈迦三尊図」全3幅と併せて
伊藤若冲が京都相国寺に寄進したものだった。毎年相国寺で行われる観音懺法という行事の際には「釈迦三尊図」「
動植綵絵」の全33幅を相国寺方丈に配していたそうな。
しかし、明治22年に廃仏毀釈運動で存亡の危機に瀕していた相国寺は、1万円の下賜金で「
動植綵絵」30幅を皇室に献上し、これを資金に境内地一万八千坪(!)を買い戻せたという。
今年は相国寺の開基、足利義満の没後600年にあたるそうで、これを機として約120年ぶりに「
動植綵絵」が相国寺に里帰りすることになった。
今回の展示場の相国寺境内にある承天閣美術館は、1984年に相国寺創建600年を記念して設立されたそうだけど、その設計時に「いつの日か「
動植綵絵」の里帰りが叶ったときに一室で展示が出来るように」と配慮して建築されたんだって。まさに願ったり叶ったりとはこのこと。
なにはともあれ、三の丸尚蔵館で6幅ずつ別々に見たときでもめちゃめちゃすごかった「
動植綵絵」が一斉に展示されると聞いては「これはもう行くしかないっしょ!」と、去年からずっと胸が躍っていたわけで、おそらく僕と同じように去年若冲に魅せられてしまった多くの人々が同じ思いだったに違いない。きっと全国からたくさんの人が見に来るんだろうなー。
でも展示期間は2007年5月13日〜 6月3日と1ヶ月もないので大混雑は必至。。いや、こんな空前絶後の展示なんだもの。それもまた当然だろう、、とネットで事前情報や混雑状況などを何日も前から調べたりして、相当気合いを入れてでかけたのでしたw
京都入りした5月29日は既に午後だったので、その日は広隆寺とかを見仏して終わり。シーズンオフの太秦はなんだかとても寂しげだった。広隆寺の仏像は面白かったんだけどねー。
翌30日朝8時半、いよいよ相国寺へ。

昨日までの天気は一転、朝からどしゃぶりだったけど「ラッキー。雨のおかげでちょっとは空いてるかも」と天に感謝する有様w
最終週だったので8時半で大丈夫かなあ、と心配していたけど既に並んでいたのは50人くらいだったろうか。このまま開館時間の10時まで待つのかなーと思っていたら9時すぎに入場開始。どきどきどきどき。チケット買ってから会場入口までちょっと歩く。歩きながら傘や荷物ごそごそしてたら、あれ、チケットがない!「落とした!?いやこんな数メートルしか歩いてないのにそんなはずは!えーでもないー。どうしよう。。」と頭真っ白になって半べそかいて戻ると後ろから来た人が拾ってくれてました・・(少し落ち着け

そんなこんなで、いよいよ入場〜。
第1会場では水墨画がメイン。鶴や鯉の掛け軸や川を渡る布袋さんのお尻なんかもあった。鹿苑寺(金閣)のふすま絵は若冲お得意の葡萄図。芭蕉も迫力だった。

布袋渡河図
でもはやる心は抑えられずどこか気もソゾロなまま、50メートルくらいの通路を歩いて第二会場へ。
ばーーーーん!
薄暗い大広間の真正面に釈迦三尊図が。その横に
動植綵絵が左右に3幅ずつ。残りは左右の壁にずらーっと並んでいて、そのすべてが一斉に目に飛び込んできた。
(会場の様子はこちらから→
ブロガー向け先行プレビューに行かれた方のブログ)
も・の・す・ご・い。
去年全てじっくり見たはずの
動植綵絵が、ここではまるで違って見える。
釈迦三尊含めた全部合わせてはじめて完成だったんだ。
全部揃ったら絶対すごいと思っていたけど、予想を遥かに上回るすごさにボーゼン。
まだそんなに混んでなかったので人垣もそれほど邪魔にならず、しばらく真ん中に立ってぐるぐる見回していた。
三の丸尚蔵館で見たときは、1幅1幅のおもしろさや変さがある意味グロかったりもして、それがシュールで素敵だったんだけど、この部屋で見る全幅はほんとに全然違う。
不思議な形のままぴたりと静止していたはずの鯛や雀や鶏たちが、すべてが活き活きと脈打ち動き出すような感じ。そしてその真ん中に静かな静かな釈迦三尊。
やべーこみあげてきたよ、と思う間もなくだーだー泣いてしまいました。。
しばらくしてちょっと落ち着いたので第1会場に戻ってみたらもう結構な人だかり。一応もう一度ひと通り見てまた第2会場へ。本当にずーっとこの部屋にいたい、って思いながら真ん中で立ち尽くしてしまう。
もちろん近寄って1幅ずつ見たりもしたんだけど、なんというか絵を鑑賞するなんて落ち着きはらった状態ではないんだろう。近寄っても何を見てるのか自分でよくわからない(爆)だって、隣にもその隣にもたくさんの生き物がいてそれぞれきらきら輝いたりわさわさ動いたりしてるんだもの。
これは展覧会なんてものじゃない。呪術的もとい宗教的な「ハレ」の祝祭空間なんだ。釈迦三尊、
動植綵絵、そして次第に増えてくる人々たちの晴れがましく嬉しそうな顔、顔、顔。すべてが犇めきあい、蠢きだすかんじ。日常とは違う異常な恒常(書いててわけわからん)。そらぁ涙も溢れるわさ。
なんてかんじですっかり酔っぱらったようにうるうるしているうちに、第2会場もかなり混雑してきた。名残惜しみつつ出口へ向ったのは10時半過ぎぐらいかな。
その頃には第2会場入口でも入場規制で待たされている行列ができていた。
カタログ買って、外のミュージアムショップで鶴の手ぬぐい買って外に出たら長蛇の列。
しばらく歩いてから帽子をかぶっていないことに気づいた。たしか第2会場で思わず脱帽してずっと手に持ってたはずなのに、ない!(またかよ。。)
荷物を引っくり返しても見つからないので出口まで戻ってスタッフの人に会場を探してもらうが大混雑で見つかるわけもなし。「まあ帽子なくしても別にいいかー」ぐらいに思ってたけど、もし見つかったら着払いで送ってくれるというので一応連絡先を書くためにカタログ売場の方まで引き返す。「おお。もう一回遠くから見れるかも?」とか邪心を抱きつつ歩いて行くと、カタログ売場の横にある休憩用の椅子が並ぶ窓際に黒い帽子が置いてあるのが外から見えた。「あれですあれです」と思わず口走ってしまったのでスタッフの人が取りに行ってくれて中には入れませんでした(爆)

ハードカバーのカタログ。裏表紙は鳳凰図。
その後近くのちょっとタカビーなお姉さんが切り盛りしてる喫茶店でお茶をしたときも、荷物整理をしようとカタログやらなんやらでパンパンにふくれあがった鞄に手をつっこんでゴソゴソやっていたら、左手の薬指の先に痛みが走り見てみたら血がどくどくとでてくるでてくる。。
どうやら裸で突っ込んであった4枚歯のカミソリに無造作に触ってしまったらしい(怖
ティッシュと輪ゴムで止血しました。。
チケット落として帽子忘れて最後に出血w。まあ、それほど気が動転していたのかなあ。
お茶しながら止血しながらもまだ胸が熱くなって泣きそうになってたものな・・・
京都に住んでたら絶対もう一回行っただろうなあ。二泊三日の旅にしとけばよかったなあ。
昼飯食って雨上がりの午後、新緑モミジの東福寺を回ってから
若冲のお墓と若冲が下絵を描いたという五百羅漢の石仏がある石峯寺へ。
濡れた竹林の中にたたずむお釈迦様と羅漢さんがとても素敵だった。
寺自体も中国風な造りが素敵だったし、「雨上がりで暑いし蚊が多いから」と団扇を貸してくださったお寺の人も嬉しかった。
でも今回の相国寺の若冲展を見に来たたくさんの人が、やはり石峯寺を訪れたのはいいとして、その中の誰かが30体もの石仏を倒したり割ったりした、という事件があったと聞いて悲しくなった。お寺の人が応急処置をしてくれてたおかげで、ぱっと見ただけでは気がつかなかったんだけど、ほんと、なんなんだろうね。

釈迦生誕
天と地を指差してすっくと立つ「天上天下唯我独尊」のポーズなんだろうけど、どうみても「いやぁー」とぽりぽり頭をかいているようにしか見えないw
なんでこんな愛らしいものを壊すかな・・・
腹が立つ、というより、わからない。その場の勢いとかノリとかなんだとしても、やっぱりまったくわからない。それほどここのお寺と五百羅漢は破壊や悪意などとは無縁の場所だったんだよね。
と、まあ、こんなかんじで待ち望んでいた若冲詣では終わったのでした。
東京に帰ってきてから何日か経つけど、まだあの会場の空気に胸が震える。
今日6月3日は若冲展の最終日。
動植綵絵はまた皇居に戻されてしまい、あの空間は消える。
それとも今年の観音懺法(6/17)では、釈迦三尊とともに
動植綵絵が掛けられるのだろうか。ああ、もしそうなら、、見に行きたい(爆)
★6月25日 追記★
相国寺が「釈迦三尊像」(三幅)と「
動植綵絵」(三十幅)の精密な複製を発注しているとのこと。すでに宮内庁の許可を得て作業を進めており、釈迦三尊像の複製画は完成し相国寺に納められた。すべての複製を4年後に完成させ、年に一度一般公開をするという。「観音懺法」の際にも掲げる計画もあるそうです。
複製は、等倍のフィルムで撮影し、顔料を多く含むインクで木版画のように1色ずつ手作業で色を重ねる「コロタイプ」と呼ばれる印刷技術によるものだそうで、自然な濃淡表現ができるという。費用は1幅700万円以上だって!
ものすごく精密な浮世絵だと思えば複製だとしても年に一度33幅が見られるのは素敵なことなのかもね。
ニュースソース→
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タグ : 伊藤若冲 動植綵絵
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