1. 無料アクセス解析

「子猫をお願い」


子猫をお願い

気象庁が梅雨入りを宣言した翌日、予報が外れて目が痛いほどの太陽ギラギラの暑い日に、寒い冬の韓国映画を見た。

高校時代に仲良しだった5人の女の子。二十歳になった彼女らひとりひとりが、家族を離れ社会と向きあっていこうとする様を等身大の目線で描き出した青春映画の佳作だったよ。

公開当時に見た友人も含めてなかなか評判もよく、ずっと見たいと思っていた韓国映画。なのにどこをどう勘違いしたのかずっと「子猫を探して」というタイトルだと思い込んでいた。とんでもない間違いだ。偶然に拾われた子猫は急にいなくなることもなく、自分たちのことで精一杯な5人の女の子の間をたらい回しにされるんだし、自分の道を見つけようとする彼女たちにとって気まぐれに拾った猫は愛玩の対象ですらなく、そんなことはおかまいなしに子猫はいつの間にかどんどん大きくなっていくんだから。いや、当の子猫自体はめっちゃくちゃかわいく撮られてるんだけどね。

タイトルにもなっている子猫よりも、彼女たちの間ではるかに比重が大きいのは携帯電話。
というか、もしかして携帯電話会社とのタイアップなの?、と思わせるほど全面に押し出されていた。メールを打つシーンでは電光掲示板のようにその文字が流れるし同時通話の分割画面は後でDoCoMoかどこかがCMでパクったような…
高校の頃いつも同じ時間と場所で一緒に遊んでいた彼女たちは社会に出てからは携帯電話で連絡を取り合い、ときどきは昔のように集まって遊んだりもする。でも宴が終わればまたそれぞれ自分の問題と向き合う生活に戻される。そしてまた携帯・・・。でもだからといって「わたしたちはなればなれになっても携帯があればいつでも繋がれるからひとりだって大丈夫」的な安直さはない。部分的に取り出せばCMにも見えちゃいそうな映像なくせに、携帯電話特有のすれ違いとか気まずさなどがリアルに描けていた気がする。

ネットを見ていたらこの映画の感想でなかなか面白いものがあった。
いわく「猫は韓国では不吉の象徴で(これは映画の中でも語られている)もらわれた先々の家族が次々に崩壊していく」そして「あらかじめ繋がれてしまっている有線電話を家族に例えるなら、オンオフが自由で排他的ともいえる携帯電話は孤独の象徴」といったかんじのちょっとイコロジックなものだけど、なかなか読み応えがあったので。→http://kermit.pos.to/film/040626.html

優れた映画は、おそらく撮る側はそれほど意識していないままにその土地の慣習や温度や匂いといった、そこに暮らす人々にとっては当たり前すぎて気にもならないだろう風土までを映し出していることがある。一番端的なのは食べ物だったりするんだけど、この映画の場合は例えば丸い餃子だろうか。
ドヤ街に住む友達を訪ねた女の子が、おばあさんに半ば無理矢理勧められ口に詰め込む冷たい餃子。「遊んでるのは姉さんだけだろ」と弟に言われて父親のために市場に買いに行ったついでにむしゃむしゃほおばる湯気のたつ餃子。思わず晩飯に餃子を作ってしまったんだけど、韓国の餃子は日本のニラ饅頭みたいなかんじ。
本当に日本とよく似ているのになにかが違う韓国の町での暮らしが手に取るように伝わってくる。地下鉄、オフィス、家族のいるリビング、ディスコ(クラブというよりは)、サウナ屋、ドヤ街・・・そのどれもが女の子たちの生活を通してなまなましい。
きっとそれは5人の女の子やその周りの人々がみんなちゃんとそこで生きているかんじがするから。
でもまあ「へえ、韓国のオフィスは仕事中に携帯電話をマナーモードにすることもなく普通にがんがん私用電話していいのかー。あら、バスでも普通にしゃべってら」なんてそんなことに目がいっちゃうんだけどねw

携帯メールやタイプライターの文字が、場面の暗い部分にご丁寧にもその形に合わせて流れていくという見せ方には最後まで抵抗があったし、ドヤ街の廃線のさびたレールが夕日に光る、といったどこかで見たようなカットなんかも鼻にはついた。
おそらく「見ろ!」と言わんばかりに撮られた部分は全部あんまり好きじゃなかった。
現実の中での挫折や苦悩そして旅立ちといった青春映画の物語としても、何となーく中途半端で、見終わってから「え!これで終わり?」って思ったりもした。

期待しすぎて見始めた分いまいちだった部分もあるけれど、でもやっぱり淡々とよかったかなあ。
ちょっと「はっ」としたのが、映画のはじめの方で証券会社に勤める女の子が早朝出勤をして、まだ誰もいない静かなオフィスの窓を開けるシーン。きゅっと取っ手をひねって手前に窓を倒した瞬間、ソウルの町の雑音とともに外の空気が入り込んできたところ。こういうなにげないちょっとした瞬間がとても好きだった。
監督は女性の人だそうで、なんか納得。韓国映画に出てくる女性といえば顔をいじってるような美人ばっかりが出てくる印象だったけど、この映画の女の子はみんな普通でしかもとてもいい顔をしていたし。

映画の後半からなんとなく「ああこれって、くるりがBGMやったらドンピシャだなー」って思った。そう、「ジョゼと虎と魚たち」の空気感なんだよね。「子猫をお願い」のエンディングテーマが、ドライブ感溢れるギターの「ハイウェイ」だったら、ほんとぴったりだものな。

ぼくが旅に出る理由は
だいたい100コくらいあって
ひとつめはここじゃどうも
息が詰まりそうになった
ふたつめは今宵の月が
ぼくを誘っていること
みっつめは車の免許
取ってもいいかな、なんて
思っていること…

うーん、また「ジョゼ…」見返したくなってきた。




テーマ : 韓国映画 - ジャンル : 映画

トラックバック
この記事へのトラックバックurl → http://murakamit.blog71.fc2.com/tb.php/56-1abc5dca
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
コメント
コメントの投稿
 ※コメントの再編集・削除時に必要となります。
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。