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東京散歩 赤坂~神保町~日本橋(「珈琲時光」後記)

日本橋1

期せずしてだらだらと東京を巡る一日。

梅雨のはずなのに朝からギラギラと太陽が照りつける今日は赤坂のテレビ局で働く友人と会うことになっているので久しぶりに午前中から起きて支度をする。
ずっと出かけていないので着るものに迷うが、どうやら真夏日になりそうなので一昨年北斎展に行ったときに買ってまだ一度も来ていなかった墨で描かれた花の絵のTシャツを着て行くことにした。
北斎Tシャツ


赤坂近辺はほとんど未知の場所なのでパソコンで鉄道アクセスや時間を調べて少し早めに家を出たのだが、久米川から乗った電車に急病人がいて手当のため10分ほど停車した。終点の西武新宿駅で降りて少し歩きJR新宿駅西口の銀行で金を降ろす。余裕があれば久しぶりに新宿をぶらつこうと思っていたけれど西武線が遅れたのでそのまま地下鉄丸ノ内線に乗る。転落防止のために電車のドアとは別にホームにもゲートが設置されている。ドアが開きホームのゲートも開いて丸ノ内線に乗車。地上にホームがある四谷駅で乗り換え。今度は南北線に乗るべくまた地下へ降りる。2駅先の溜池山王駅で下車。ぷしゅ~。ドアが開き、ホームのゲートが開く。

地下道の案内図を見てもテレビ局方面の出口表示がなかったので改札口の駅員に聞く。「ええ?それなら最寄駅は赤坂だね」と言われるがその駅が何線なのか、ここからどうやって行くのかの説明はなし。「ここから歩くならどうやって行くのでしょう」と食い下がると「・・・こっから歩くなら地上に出て外堀通りを右に行って山王下っていう交差点を左だね」とめちゃくちゃ早口で説明された。
うーん、これぞ東京の駅員。無愛想でぶっきらぼうで、自分の知っていることを知らないヨソ者らしき人間を邪険に扱う偏狭な態度。でも言葉が通じるかどうかもわからない外国人相手ともなればまったく態度が違ってくるのだろうから面白い。いま早口で説明されてまるで頭に入らなかった道順も正確なものではあるのだろう。やっぱり東京はこうでなくちゃな、と妙なところで納得をする。「ありがとうございました」とそそくさと会話を打ち切り地上へあがると、警備か交通整理をやっているお巡りさんがいたのでもう一度道を聞く。今度は割と親切に教えてもらえたので迷うこと無く約束の時間ぴったりに待ち合わせ場所のテレビ局正面玄関に到着。

目の前に新しいビルを建設中なせいなのかよくわからないけど、なんとなくうらぶれた感じがするロビーに座ってぼーっとする。このテレビ局も新社屋になってから結構経つのかな。正面入口なんだしもう少し華やかでもよさそうなものだけど、案外テレビ局の入口なんてものは楽屋口みたいなものかもなー。この受付に座ってる女の子たちっていくらもらってるんだろう、などとどうでもいいことを考えながら待っていると仕事を抜けた友人が来てくれた。受付で見学者用のIDパスをもらって自動改札みたいなゲートを抜けてエレベーターに乗り、上の方の階にあるレストランでお茶をする。
予備校の頃からかれこれ20年来のつきあいである友人は、ここで舞台美術のデザインをする仕事をしている。最近は忙しいようでなかなかゆっくり会う機会がなかったのだが、今回は仕事の合間を縫って時間を作ってくれた。互いの近況報告や京都で見た若冲の話、日本で唯一の宗教都市であるという天理の都市デザインのこと、「珈琲時光」の話などですぐに時間が過ぎてしまう。せっかくだからスタジオ見学でもしていけば、と勝手知ったる裏道小道を抜けていく友人の後についてバラエティやニュース番組のセットが組まれたスタジオを巡る。友人に挨拶をする大道具小道具のスタッフさんや休憩室で休む人たち。
規模は違うがなんだか大学のサークル部屋のように見えて来て面白い。「ここが俺の仕事場です」という友人に、東京のこの土地にしっかり根をおろしている安定感を感じた。
TBS


忙しい友人と別れふたたび赤坂の街へ。通りすがら「赤坂」の地下鉄駅がある。「なるほど確かにこれが最寄駅だ。千代田線なのねー」と溜池山王駅の駅員の言葉の正しさを確認しつつ、とりあえずは赤坂見附までぶらぶら歩く。昔から東京の街をあてもなく延々と歩くのは好きだけどなにしろ赤坂近辺はなじみがない。再開発された六本木に行く気もしないしどうしようかなー、と地下鉄の路線図を見ているとこの辺りはいろいろな路線の駅が近接しているようで、今いる赤坂見附駅から少し歩いたところにある永田町駅から半蔵門線に乗れば九段や神保町の方に行けることがわかった。少し腹も減って来たので前から行きたいと思っていたラーメン屋がある九段下へ向うことにした。
九段下駅の自動改札を出るときに入れた切符がまた出て来た。この駅は半蔵門線と東西線が接続しているのだが、それぞれの改札口が少し離れたところにあるので乗り換える人のために切符が戻る仕組みになっているらしい。僕はこの切符にもう用はないのだがなんとなく受け取って地上へ出ると午後四時ちょうど。この辺りで昔働いていたこともあり土地勘もあるのでなんとなく見当をつけてラーメン屋に向う。ほどなくして目的地であるラーメン屋に着くが、「三時~五時まで準備中」という貼紙がしてあって閉まっていた。仕方なく空き腹をかかえ神保町に足を向ける。

神保町交差点から水道橋へ伸びる白山通り沿いの古本屋や喫茶店が舞台となっている台湾映画「珈琲時光」を先日見たばかりだし、せっかくだから映画にも登場した天麩羅屋で腹を満たそうかなあと思った。天麩羅屋と言ってもこの辺りは学生街なので安い。近くには同じ系列のトンカツ屋や天丼屋もある。結局昔毎日のように昼に食べていた天丼屋で食べることにしたが、着いてみると午後四時で閉店だった。昔は夜まで開いていたのになあ。。
他に当てもないままに古本通りを歩き、昔よく行った店を覗いたりしてみる。しかし店に入っても古本を見る振りぐらいしかできず、なにかよそよそしい気分が抜けないままに腹は減る。
何本か新しいビルが建っただけいくつかの店が無くなりはしたものの、僕が毎日通っていた20年前とほとんど変わらないように見えるこの街を訪れる機会がある度に、なじみの天丼屋で天丼を食べ、お気に入りの古本屋を巡ってはノスタルジー気分を満喫したものだった。
しかし「珈琲時光」という映画で侯孝賢監督が見事に捏造してみせた柔らかい光に溢れる「東京」を見せられたばかりの今日の僕には、いつものように「変わることなき昔なじみの懐かしい街」を頭の中に作り上げることができなくなっていて、それどころかもうとっくにこの街の人間ではなくなっていることに気づかされるのであった。
だからといって背に腹は代えられるわけもなく、結局お茶の水の大学の学食でカツカレーを食べた。この大学の校舎は老朽化のため巨大な高層ビルとして建て直されてからもう10年ぐらい経つのだろうか。赤坂のテレビ局と同じくらいかな。
明大

学食のある17階までエレベーターで昇る。校舎がどうであろうが学食はどこの大学も一緒。まったりした空気の中学生たちがだべっている。ここは彼らの居場所。
そんな学生たちにまぎれてぼんやり外の景色を眺めながら食べたカツカレー410円はボンカレーの味がした。
明大2
17階のトイレからの眺め

とりあえず落ち着いて今度は古本屋ではなく大型書店をぶらぶらしてみたりする。時間の流れがまったりとした店内の雰囲気は相変わらずだが1階の奥にあった映画コーナーは4階に移っていて、置いてある本の量はかなーり減っていた。侯孝賢についての本なんかありもしない。
夜は仕事が終わった妻と日本橋にあるプラネタリウムに行く約束をしているので、もう一度九段下まで戻って東西線に乗ればいいだろう。そうすればさっき戻って来た切符が乗り換えでそのまま使えるじゃん、とそろそろ古本屋が閉まる時刻になってきた靖国通りを駿河台から九段下まで早足で一直線に戻る。帰宅する会社員で混み始めた九段下の東西線改札口でさっきの切符を入れると「ピンポーン」と音がなってゲートが閉まった。「あれ、半蔵門線からの乗り換えで出て来た切符なんですけどー」と告げると、室内の機械を確認した若い駅員に「この切符で3時54分に出られてますね。30分以上経っているので無効です」と言われた。当日限り有効にしてくれればいいのになあ。日本橋とは逆方向のこの駅まで歩いて来て、ここからまた初乗りの切符を買うのはなんかムカツク。でももう一度お茶の水の方まで戻るのも癪だよなあ…、と家から持って来たチラシであらためてプラネタリウムの場所を確認すると、最寄駅は日本橋駅ではなく三越前駅だった。路線図を見るとこの駅から半蔵門線1本で行けるらしいので、結局切符を買ってもう一度半蔵門線に乗る。

2006年12月15日~2007年6月30日の期間限定で開催されている日本橋のプラネタリウム。チラシによれば約500万個の星を投影できる世界最高峰のプロジェクターを使っているとのことで2つのプログラムを1時間ごとに交互に上映するらしい。
とりあえずはプラネタリウムを横目で眺めつつ中央通りを神田方面へ歩き、日本橋三丁目の交差点で仕事帰りの妻と合流してまた三越前へ戻る。
プラネタリウム外
奥がプラネタリウムのドーム入口

6月いっぱいで終わってしまうからかチケット売り場には行列ができていた。7時からのプログラムは既にほぼ満席とのことなので8時と9時の回のチケットを買う。人気あるんだねー。

プラネタリウムが終わる10時頃には店が閉まってしまうから先に晩ご飯を食べることにした。また神田方面へ歩き、妻が仕事帰りにときどき上司と食べるという中国人がやっている中華料理屋に入る。日本橋で働いている人でなければ入らないであろう小さくてそっけない店構え。壁には古ぼけた2メートルほどの巨大な扇が飾ってある。常連客らしい年輩のサラリーマンが5人ほどいて、店の主人と話しながらビールを飲んでいる。「おすすめ」と書いてあったタンメンを頼む。味はまあまあなんだけど夕方食べたカツカレーが効いていてなかなかに苦しい。レジには液晶のディスプレイが置いてあって中国元かなにかの為替チャートが表示されていた。「ちょっと味が落ちたかな」と言う妻もこの店も、この街にしっかり根を下ろしているんだな。

中央通りをプラネタリウムまで戻る。チケットを切って仮設の小さなドームの中に入ると、思っていたよりも遥かに小さくて天井も低い。場内の真ん中には呼び物のプロジェクターが設置されている。
メガスター

上映が始まれば天井の低さは感じなくなるのだろうか。8時の回の席は結構前の方。背もたれを倒すも思ったより倒れず、天井を見上げるためには体を前にずり降ろさなくてはならないがその体勢は結構腰に来そうな感じ。一番前の席なんかかなり壁に接近しているけどちゃんと見えるのかなあ。なにしろ僕は子供の頃にプラネタリウムに行った記憶がないのでこれが普通なのかひどいのかよくわからないまま、しばらくすると上映が始まった。
この回のプログラムは25分。プラネタリウムクリエイターなる人のナレーションが入りながら世界各地から見える夜空の星を見せるプログラム。500万個の星空はやはりとても低い。
プラネタリウムの映像というものは投影された星空を線で結び、これが何々座という解説が入る科学的なものなのだろうと勝手に思い込んでいたが、そんな親切な解説などないままに、どの星がどの星座かなーと思う暇もないままにどんどんすいすい動いて行ってしまう。北の国の空ではいきなりCGのオーロラが出て来たり星が見えているまま急に吹雪になってみたりとプラネタリウムクリエイターのさまざまな演出は続き、あっという間に25分間のプログラムは終了した。
出口向う途中他の客の顔を見るとみな憮然とした表情なのが面白い。確かにこのプログラムで800円は高いよなあ。9時から始まる45分間のプログラムは大丈夫かな。
プラネタリウムのドームの外の裏側にある喫煙所で一服。喫煙所の横はネットに囲まれたフットサル場になっている。ゲームしているのは日本橋に勤める会社員たちだろうか。大手不動産所有のこの敷地には、プラネタリウムのドームとフットサル場とコンビニの入った2階建ての建物とHD DVDが見れるカフェがあるのだが、プラネタリウムを閉鎖した後は全部取り壊しちゃうのかな。そして跡にはまた、巨大なビルが建つのだろうか。

とりあえず近くにあったコーヒーチェーン店に入ってアイスオレなど飲みながら、自分が思っていたのとは全然違ったプラネタリウムの文句を垂れつつ9時まで時間をつぶす。
9時の回はさっきよりは少し後ろのほぼ真ん中の席。なにしろ狭くて天井が低いので席によってもかなり見え方が違うのだ。それでも椅子はやっぱり倒れ方が足りない。
今度のプログラムは二部構成になっていて、第一部は500万個の星をバックに大岡信が監修した一般公募と詩人・文化人による「宇宙連詩」なるものが字幕で表示され、声優がそれを朗読するというもの。第二部はアメリカ自然史博物館で好評を博したというプログラムで、太陽系から飛び出て銀河宇宙を旅するというものだった。
第一部のひどさは言うまでもない。というかひどすぎ。第二部は内容的にはまあまあだったんだけど、大きな惑星が映し出されると小さな天井のせいで楕円形に歪んでしまったりして、やっぱりなかなか悲しかった。
やっぱりこういうプログラムはアミューズメントスポットにあるバーチャルシアターなんかで見た方がいいんだろうなー。
期待はずれの韓国映画を見てしまい、収まりがつかなくなって懲りずにそのまま立て続けに何本も韓国映画ばかりを見てしまったときと同じ気分になり外へ出た。今度はどこのプラネタリウムに行こう。うー、欲求不満!

中央通りをぶらぶら歩いて東西線の日本橋駅へ向う。高速道路の下にある日本橋が今風にライトアップされていた。昼間に見るのとはまた違う感じ。「高速道路を地下に埋める計画があるんだってよ」と妻が言う。
日本橋3

日本橋5

お江戸日本橋の上に高速道路を造り、何本もの高層ビルを建設して行った高度経済成長期。お台場などの臨海副都心を造ったバブル期を経て、六本木ミッドタウンや新丸ビルなどのガラス張りのビルを次々に造っている今。どこかのゼネコンの偉い人が「東京から高層クレーンがなくなったらおしまいだ」と言ったそうだが、きっとその人も確かに現代の東京に根を下ろしているのだろう。そして、年月を経てようやく根が生えだしたこの「高速道路の下の日本橋」というこの東京の風景もまた変わっていくらしい。

コレド日本橋の向かい側の小さな雑居ビルの地下鉄入口から階段を降りて東西線に乗る。
高田馬場駅で乗り換えた西武新宿線は平日夜10時過ぎなのに満員電車。久米川駅で降りて午前1時まで開いている駅前のスーパーでミネラルウォーターなどを買う。
帰り道で見上げた夜空には、星が2つばかり輝いていた今日の一日の散歩の終わり。


きっぷ


関連text
 「珈琲時光」
 ひさびさの外出 早稲田~歌舞伎町くんだりをぶらぶらと


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