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クリント・イーストウッドのインタビュー番組

花粉症は今週来週あたりがピークらしい。 家に居てもくしゃみが出るし、どっかの山では杉花粉を山火事と見間違えて通報したってくらいらしいから、 まるでなんともない人の方がおかしいんじゃないか、とも思う今日この頃。布団も干せずもっぱら布団乾燥器に頼りまくり。

作品賞と監督賞でオスカーを取ったからか、テレビでクリント・イーストウッドのインタビュー番組をやっていた。 アクターズ・スタジオの生徒を聴衆にした番組だったんだけど、 学生時代に酒場のピアニストなんかをしてた自分の生い立ちを語る中で、こんな話をしていた。

「若い頃に演技の授業で "ただ立っている" のをやった。手をポケットに入れたりもせず、なにもしない。 最初は照れくさいんだが、慣れると自分の立場がわかって周りの人や物を観察できるようになる。 その技をマスターすると、人目を気にしないというすばらしい感覚が生まれる。ありのままの自分でいていいんだ。 今の俳優たちは "何かしなくては" と思うようだがね。」

なんとも簡単に言ってのけるものだ… 前述のアカデミー賞でのすらりとした立ち姿も当然というべきか。 このインタビュー番組、イーストウッド・ファンとしては結構興味深かったのでもう少し引用。

「演技でもっとも重要なのは人のセリフをよく聞くことだと思う。 演技に限らず実生活においても、"長々話せても聞くのは下手" という人は多いし、学校ではもっと "聞き方" を教えるべきだろう。 自覚している人は少ないが、聞いているつもりでも理解していなかったり話が頭に入っていないことが多いものだよ。」

「『よく聞け』と言っても、いちいち噛みしめるように間を取れ、という意味ではないよ。1950年代はやたらに考え込む演技が流行したがね。 対照的なのが1940年の"HIS GIRL FRIDAY"だ。主演はロザリンド・ラッセルとケーリー・グラント。 二人の会話を見ていると猛烈に喋り言葉がかぶさるが相手の話は聞いている。反応を無視して話し出すことは決してない。 彼らの会話は磨きぬかれ、超特急で話しながらもうまく噛み合っている。誰も人の話を聞かない政治討論番組とは大違いだ。 ああいう番組ではみんなが人の話を遮り言いたいだけ言って一切聞こうとしない。速い会話の見本なら"HIS GIRL FRIDAY"だ。 ハワード・ホークス監督 の最高傑作だよ。」

初めて親に連れて行ってもらって見た映画が「ヨーク軍曹」だというし、「人間」としての彼の好きな映画の話ももっと聞きたかった。

「私は口数が多い方ではない。まあ、ビールを飲めば別だけどね。 現場でもジェスチャーで指示を伝えることが多いし、みんなの準備ができたらただ『撮ろう』と言う。 助監督も『静かに!』なんて叫ばず『撮ります』と言うだけだ。 裏方にもその言葉がさっと伝わってみんな静かになる。ほかのセットを訪ねるとうるさくて驚くよ。 私は子供や新しい人たちとも仕事をする中でコツを見つけたんだ。 セットを静かに保ちできるだけ仕事しやすい雰囲気を作るんだ。ミュージシャンのようにその場の流れに対応して行く。その瞬間、のね。 俳優はよく即興をやらされる。若い頃何週間も即興だけ練習したこともある。それは人生の大切な瞬間をとらえる訓練だ。 普通は見逃してしまう瞬間をね。」

役者として出ていた他の映画で、監督の怒鳴る声に馬が驚き暴れて手がつけられなくなったときに、 「怒鳴るのをやめたら?」と監督に進言したがその時は却下されたのだという。 「でも、馬も人も同じだものね。『アクション!』と叫ばれたとたんにアドレナリンがどばーっと出ちゃうだろう?」とクリントは笑っていた。 そんな「ありのまま」の「瞬間」を大切にしたという、おそらくは映画撮影の現場としては「異常」な静けさの中から、 「ペイル・ライダー」や「バード」や「ミスティック・リバー」や「真夜中のサバナ」(というか列挙してたらキリがないけど)は 生まれていたんだなー、と、なんかめちゃめちゃ納得してしまった(安直)

1992年の作品「許されざる者」は、脚本の版権をコッポラから買ってから10年間撮らずに持っていたのだという。 理由は「その役を自分が演じるにはもう少し歳を取る必要があると思ったから」。もう、ただ唖然とするしかない。
それからさらに10余年。44マグナムをぶっぱなすマッチョなアメリカのアクションヒーローとして、 いまだにイーストウッドをとらえている人がどのくらいいるのかは知らないけれど、 そんなことはおかまいなしで毎年作品を取り続けている74歳の彼は、決して大林宣彦が気軽に「クリントおじいちゃん」などと 呼ぶことは到底許されるはずもない、 やはり黒沢清が言うような 「今現在世界で最強の男」なんだろう。

惜しむらくは、自画自賛の国に生まれてしまったがために、世界での評価があまりにも不当に低すぎる、といったところか。 青山真治は 「たとえば『ミスティック・リバー』について語る時、イーストウッドが掴んだものをスタッフ、キャストの誰も掴んでいない状況が あの作品の現場だった、という視点なしにあの作品を特集する意味があるとは思えない。」などと知った風な口をきいていたけど、 確かに現在のアメリカでクリント・イーストウッドの孤独を理解している人は果たしてどのくらいいるのだろうか。



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